飯野亜紀子さんに続き、
ビオキッチンに関わる人をご紹介します。
ビオキッチンのもう一人のメンバー、武笠民さんは
みんなのムードメーカー的存在。
その手で作られるお惣菜も、周りの空気を読んで、
他のメンバーにない彩りや食感を加えて生み出されます。
そんな民さんが藤野にやって来たきっかけやビオ市とのつながり、
「創作中華まん民民(みんみん)」の活動についてなどお話を伺いました。
田舎暮らしにひかれて藤野に来たと聞きましたが?
田舎暮らしを模索
2006年から都内の不動産会社に勤務し、
田舎暮らしや別荘物件を専門に扱う情報誌の編集に携わっていました。
その頃からいつか田舎暮らしをしたいと漠然とした想いは抱いていました。
でも当時は「老後は」とか「いつかは」とかその程度だったと思います。
2007年頃、その情報誌の取材でマクロビオティック料理家・中島デコさんにお会いしました。
環境問題、医療問題、食料問題などさまざまな社会問題を解決し、
世界平和へと向かうツールはこれだ!!
と、マクロビオティック的生活を始めたのです。
食べることが大好きなので、もともと料理も好きでしたが、
これをきっかけに仕事を続けながらマクロビオティックのスクールに通い、師範科まで修了しました。
今思えばマクロビオティックや中島デコさんとの出会いも藤野移住につながっていると思います。
2012年に長女が生まれたのですが、
当時住んでいた杉並区で待機児童が問題になった年で、
我が家もフルタイムで働いていたのに認可保育所に入れないという問題に直面しました。
必死で「保活」をして運良く都の認証保育園に滑りこむことができ、職場復帰したのですが、
東日本大震災の影響を受け、当時住んでいた古い一軒家を退去しなければならず、
猫を飼っていたために転居先がなかなか見つからないことなども重なって。
夫と話し合った結果、子育てをするにも東京から出るのはいいことではないかということになりました。
思い切って私は仕事を辞め、まずは実家近くの千葉市に避難(?)し、
そこを拠点に永く住める田舎暮らしの地を探すことにしました。
そんな中で、都内から藤野に移住していた夫の友人、ライター(であり神出鬼没のたこ焼き屋?!)
の山本泰行さんに誘われ藤野を訪れたら、会う人会う人が面白い!
何度か遊びに来ましたが、毎回、イキイキとしていて楽しい、魅力的な人が多いなあと。
大人が楽しんで生きているというのは子育てをするうえでとても大切なことだと思ったのです。
そしてトドメはいま娘たちが通う「のびるっこ」保育園の運動会を見学させてもらった事。
跳び箱や板上りに何度も何度もできるまでチャレンジする子どもたち。
それを大人が時間も気にせずできるまで見守るというちょっと信じられないものでした。
しかし子どもたちの目は輝いていて、保育士の皆さんは子どもたちの力を信じていました。
藤野で子育てしたい!という気持ちが確信に変わりました。
ビオ市との出会いは?
初めて買い物に行ったら、なぜか出店者ミーティングに参加
そんなこんなで2015年の12月に藤野に引っ越してきました。
引っ越しの当日か翌日だったと思いますが、スーパーまつばへ買い物に行き、
たまたま見たポスターで「ビオ市」を知りました。
ここに行ったら新鮮なオーガニック野菜が買えるとわかり、
当時3歳と1歳の二人の子どもを連れて買い物に行きました。
子どもとモタモタとごはんを食べたりしていたら、
いつの間にか終了後の出店者ミーティングが始まり、
結果的に出店者に混じっているような形になってしまって(笑)。
いいのかなと思いながら隅っこで話を聞いていると、
「もっとこうしたらいいんじゃないか」「じゃあ次回やってみよう」と
前向きな意見が飛び交っていて。
「いいたいことを自由に言い合える雰囲気があり、みんなが積極的に、楽しくすることを考えている。すごくいいな。」
と、ビオ市の出店者さんたちに魅了されてしまいました。
ちなみに、主催者のツッチーにこの話をしたら、
この時が記念すべき第一回のビオ市で、
出店者ミーティングをしたのは後にも先にもこの時だけだそうです(笑)。
ビオ市出店のきっかけは?
ビオ市に来られなくなるなら、出店すればいいとひらめく
それから毎回楽しみにビオ市に通っていましたが、
下の子を保育園に入れようとした時に
「働きはじめたらビオ市に来られないじゃん!」と気づきました。
そして、「そうだ!自分がビオ市に出店して、仕事にすればいいんだ!」とひらめいて
事務局に相談してみました。
こんなに積極的に動けたのはやはり藤野の風土というか雰囲気に後押しされたのではないかと思います。
ビオ野菜を使うこと、既存の出店者と被らないこと、
という2つの出店条件を出されて思いついたのが、
出店者さんの野菜を使ったグリーンスムージーとマクロビオティックスコーンという、
わが家で人気の朝食メニューでした。
藤野では思いのほか果物が手に入りにくいという問題はありましたが、
野菜との組み合わせを考えたり、仕入れをしたり、初めてのことばかりで、
毎回ドキドキしながらも初めての出店を楽しんで参加していました。
中華まん民民は藤野で誕生したのですか?
「中華まん民民」はまつば市の「カブまん」がスタート
ビオ市から派生したまつば市(※)に初めて出店した時、
いつも通りスムージーとスコーン、マフィンなどの焼き菓子を出したものの、
朝開催のビオ市とは違い、昼開催のまつば市ではご飯になるものが求められていると感じました。
冬に向かい寒くなる頃だった事もあり、
歩きながら食べられる、あたたかいもので、中華まんはどうかと思いつきました。
ありきたりの肉まんではつまらないし、ビオ市のお客様にはベジタリアンの方も多い。
ビオ市なんだから、出店者さんの野菜を主役にした野菜だけのおまんじゅうを作ろうと思いました。
そして、たまたまその時期に出ていた蕪で「カブまん」を作ってみたらとても喜んでもらえて。
回を重ねるごとに、「また食べたい」「もっといろいろな野菜まんも食べてみたい」
と言っていただけるようになりました。
その後、大根まん、トマトまん、なすまん、バナナまんなどを創作しては販売するようになりました。
面白いかなと思って中華っぽいコスチュームで販売してみたら、
なんとなく「中華まんが上手な人」みたいなイメージが定着してきたので
「創作中華まん民民」と屋号もつけて
ビオ市以外のイベントにも出店するようになりました。
中華まん民民が生まれたのはビオ市のおかげなんです。
ビオ市、ビオキッチンチームの魅力は?
クオリティーの高い料理と、つながり合う場所
それからいろいろあって、まず私が飯野ちゃんのビオごはんプレートのお手伝いをするようになり、
その後ビオキッチンチームが生まれました。
メンバーは現在4人ですが、全員が揃って出品できることがほとんどないので、
毎回2〜3人で3品ほどずつお惣菜を作り、ひとつのプレートにします。
それぞれのメンバーがアイディアや手間暇を集中させた一品が集まったプレートなので、
毎回驚くほど美味しくて、クオリティーが高いと自負しています。
私も他のメンバーの作ったものを食べるのが毎回楽しみなんです。
普段の食事は野菜中心ではありますがベジタリアンというほど徹底してはいません。
でもビオ市にはヴィーガンの方もいらっしゃいますし、
より多くの方に安心して食べていただけるように、
動物性食材は極力使用せず、調味料も手作りだったり伝統製法で作られたものに拘っています。
ビオキッチンはヴィーガンと限定しているわけではありませんが、
自然に、ほぼ毎回ヴィーガンプレートになっていますね。
野菜の美味しさを生かしたシンプルな料理を心がけていますが、
ビオ市のお客さんはお料理上手の方も多いので、
ありきたりのものにならないように心がけています。
あとは、他のメンバーはそれぞれ特徴があるので、
私はみんなの作るものがだいたい出揃ってからバランスを見て
ビオキッチンプレートにまとめる調整役に徹しています。
ビオ市に出店するのは、何といっても楽しいです。
ここに来たら会いたい人がいて、おしゃべりして。
用事がある人も特別ない人も、2週間に1回、顔を合わせて「最近どう?」
とお互いの近況を報告し合い、笑ったり時には相談に乗ってもらったり。
ビオ市は単なるオーガニック野菜市ではなく
地域の社交場のようになっています。
ビオ市に来ればいろんな人と出会い、つながることができる。
ここで情報を得たり、自分から発信もできる。
最近はビオ市が注目されて、地域外からのお客さんも増え、取材なども入ります。
参加者の一員としてとてもうれしいです。
ビオキッチン以外にも活躍していますね?
のびるっこ、ポートレード、民民も楽しんでいます
この春からは、ビオキッチンのほか、
藤野の中でも山あいの美しい里山集落、篠原にある保育園「のびるっこ」の給食調理、
ふじの駅前ポートレードのスタッフとしてのお仕事もスタートしました。
グラフィックデザイナーの義弟に「民民」の素敵なロゴを作ってもらったので、
ロゴを入れて看板や小道具を作ろうかなとか、
コスチュームは藤野のアーティスト、スタジオ再生流さんにオーダーしちゃおうかな、とか、
少しずつお店の体をなすように作り込んでいこうといろいろ考えています。
今後も楽しみながら続けていきたいです。
出店依頼もお待ちしています!
ベジタリアンの方も安心して食べられる創作野菜まんの他、
定番の肉まんも好評なんですよ。
_____________________________________________________
独特のセンスと卓越した調理技術をもつ民さんは、
いつも控えめながら湧き出るアイディアを深化させ、
いろいろなところで才能を発揮しています。
これからも民さんから生み出される、シンプルながら
オシャレ感を感じるお惣菜を、ビオキッチンでお楽しみください。
※藤野のまちのスーパー「まつば」駐車場にて2016年9月から2017年2月まで開催された昼市。
まつば内にビオ野菜の常設コーナーが設置されたことに伴い終了。
この記事へのコメントはありません。